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碁の心理学―上達を妨げるプライドとは 

「碁は奥深い戦略的頭脳ゲーム」のイメージが壁に…


 碁は、平安貴族や江戸時代の武士・僧侶、近代の政治家や文人などのたしなみとして、主に支配者階級に長く愛されてきました。そうした歴史の中から、碁は高度に洗練された戦略的思考ゲームであり、世界で最も奥深い頭脳ゲームだという評価を得てきました。

 そのため、世間の人は碁を打つと聞いただけで、「高尚な趣味」と褒めそやします。まして有段者ともなれば、大変頭のよい人だということになります。そうした碁のイメージが、幅広い普及を阻害している面もないとはいえません。

 確かに碁は、強くなればなるほどその奥深さに瞠目させられます。なにしろ、超一流のプロ棋士をして、「碁の神様に比べれば私はほんのわずかのことしか知らない」と言わしめるほど、碁は深い学問性と芸術性を備えた戦略的頭脳ゲームなのですから…。

 しかし、それはアマ強豪レベルやプロの世界での話。それとは月とスッポンほどの技量の差がある初心者でも、碁は楽しめるのです。むしろ、必要以上に「高度に頭脳を使うゲームだ」と考えることは、碁を楽しむ上でマイナスになります。

 ある街を愛するなら、地図や写真を眺めるよりも隅々まで歩き回るほうが面白く、また街の様子が手に取るようにわかります。パターン認識のゲームである碁も同じです。頭ではなく、指先で楽しみ、覚えるものと理解してください。

 次に、学歴や社会的地位のプライドが囲碁上達を妨げた実例を2つほど紹介します。

症例1 挫折の原因となった肩書


 これはある中堅企業の経理部長さんのケースです。彼は20代後半の部下を含む社内の数名と一緒に碁を始めました。ところが数回、碁会に顔を出したあと、出なくなってしまいました。原因は入門時からの上達が遅く、部下にかなりの差をつけられたことです。経理部長の肩書が許せなかったのでしょう。

 同時にスタートしたら若い人が早く強くなるのは、囲碁界の常識です。それに、碁が本当に頭を使うのは有段の域に達してからです。初級レベルは、囲碁特有の図形的パターン認識に早く慣れるかどうかの差でしかないのです。

 彼の社会的地位が、せっかく覚えた囲碁の継続を阻んだのでした。

症例2 「高学歴」と「若さ」が敗北したその日から…


 もう一つの実例です。事務系会社員のAさん、Bさん(大卒)は30代半ばから碁を覚え、40歳で2級になったところで足踏みしていました。その囲碁仲間に、高卒でドライバーの仕事をしていたCさんが加わりました。Cさんは2人よりも少し年上で、碁を始めたのも遅く、棋力は7級程度でした。

 ところがこのCさん、ある年下の四段の人と碁を打つようになってから突然、囲碁に狂い始め、棋書を読み漁りました。そしてたちまちAさん、Bさんに追いついてしまったのです。

 あとから碁を始めた人に追いつかれるのは、気持ちのよいものではありません。それに自分たちのほうが若くて学歴も上です。負けるはずがないと思っていたのかもしれません。そこで奮起して碁を基本から勉強し直せばよかったのですが、2人はCさんとの対局を避けるようになったばかりか、次第に囲碁への熱が冷めていきました。

 一方、Cさんは順調に棋力を伸ばし、2年後には晴れて初段になりました。囲碁の上達速度と学歴は当然、関係ありませんし、努力次第では年齢のハンデも問題としません。

 それにしても、変なプライドは成長にとって大きなマイナスとなるのですね。これがゴルフだったら、「熱心に練習する人にはかなわないね」と、おおらかな気持ちでいられたかもしれないのですが…。

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