初段からの囲碁勉強法
碁は戦いのゲーム…と目覚めるきっかけ |
これまで触れていませんでしたが、実は私には5つ年下の弟という強力なライバルがいました。父が相手欲しさに私に碁を教えたように、私も弟に無理やり碁を教えたのです。碁は年齢が低い人ほど上達が早いはずですが、ヘボな父と私以外に碁を打つ相手がいない弟は、私たちを追い越すことがきません。
そんな弟と久々に碁を打ったのは、そろそろ初段を名乗ってもよいかな、という頃のことです。布石の形が悪い弟の碁に油断していたら、互先でずるずると3連敗して、常先に追い込まれてしまいました。弟の碁は私とは正反対で、石が離れている間はとても弱そうに見えます。ところがひとたび石がぶつかり合うと急に力を出し、泥沼の戦いに引きずり込んで敵の石を殺してしまうのです。
「次は二子だな」
とうとう弟にそんなセリフを言わせるまで、私は負け続けました。
「バカ言っちゃいけないよ」
と半分は非力な自分に腹を立てながら、ひとまず碁をやめにして、戦いの場を酒宴の席に移したものです。ちなみに、弟とは酒の強さもいい勝負でした。
詰碁はやさしい問題をたくさん解く
選んだのは5級向けの詰碁問題集です。1、2級向けでは難しいと感じたからです。それに詰碁は解けないとやる気がしなくなります。少なくとも半分は解けるレベルの問題集を選ぶべきでしょう。解ける快感が上達を促すのです。
碁の本を作る編集者ないし囲碁ライターは、「解ける問題は勉強にならない」と考えるのか、難しい問題を選ぶ傾向があります。初段の問題集などには「実戦でわかったら四、五段」というレベルのものがかなり多く入っています。だから詰碁に限れば、標題にあまりこだわらず、できるだけやさしい問題集を選ぶのがよいのです。実戦では、ひと目でおおよその変化までぱっとわかるレベルじゃないと、役に立ちません。
ところで、碁は本の勉強だけでは強くなりません。私は、実戦でも意識して戦いを自分から仕掛けるように心がけました。目先の勝ち負けよりも、攻め合いや死活を真剣に考える場をたくさん経験することを優先させたのです。だれでも負けるのは悔しいので、負けた原因は強く覚えています。有段者になったら、せめて勝負どころだけでも局後の検討をやりたいものです。
私が級位者時代に上達がもたつき、有段になってから順調に昇段できたのは、あの悪力の持ち主、弟というライバルがいたためです。特に、前述の悔しさが勉強法を変えてくれました。
戦闘力がつくと定石が分かってくる
死活や戦いの力がついてくると、級位者時代に覚えた定石の意味がだんだんとわかってきます。定石はたいていの場合、実利と厚みに分かれるので、碁が弱い時代は厚みを選んだほうが不利に感じてしまうものです。ところが、力がついてくると、だんだん厚みのすばらしさが実感できるようになります。厚みを過信するくらいのほうが、強くなる可能性が高いのです。そして次に、厚みの生かし方や定石選択の問題など、全局的な思考法を学ぶ必要性を感じるようになります。いよいよ高段への扉を開けることになるわけです。
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